(写真提供:Photo AC)
2020年に心筋梗塞を患った解剖学者・養老孟司先生は、2024年5月に「小細胞肺がん」と診断されました。養老先生の教え子で、自らも膀胱がんを経験した東大病院放射線科医師・中川恵一先生や、娘の暁花さんとともにがんと闘っています。そこで今回は『養老先生、がんになる』から一部を抜粋し、養老先生のがんが発覚したきっかけについてお届けします。

病院に行く決心をした理由

4年前(2020年)、心筋梗塞で入院し、そのときのことを『養老先生、病院へ行く』(中川恵一との共著)に書きました。

僕は病院にはできるだけ行きたくはないし、医療とはなるべく距離を置きたいと思っていますが、病院に絶対に行かないと言ったことはありません。

あのとき病院に行く決心をしたのは、本にも書いているように、「体の声」が聞こえたからです。

学生の頃、東大医学部で教授から、何か軽い症状があったとき、1週間様子を見て、症状が消えなかったり、悪化しているときには、病院に行くべきだということを教わりました。

1週間たっても消えない症状や、だんだん悪化していく症状のことを、僕は「体の声」と呼んでいて、自分が病院に行くかどうか迷ったときは、この声に従うことにしています。

心筋梗塞のときは、体調が悪いのが1週間たっても回復しなかったので、教え子で東大病院の医師でもある中川恵一さんに連絡して、診察してもらうことにしました。そこで、心筋梗塞であることがわかり、緊急入院することになったのです。