4年ぶりのCTの結果

中川さんは、東大病院の総合放射線腫瘍学講座特任教授で、一緒に仕事をしたこともあり、長いつきあいがあります。4年前に心筋梗塞を患ってからは、担当医の1人として体のほうも診てもらっています。

心筋梗塞の治療を終えて退院してからも、3カ月に1回、東大病院で定期検診を受けています。ちょうど24年4月30日が検診の日なので、そのときに背中の検査もしてもらうことになりました。

娘が中川さんに電話をしたとき、「ちゃんと診てくださいね」と言ったようで、中川さんは苦笑いしながら「ちゃんと診ているんですけどね」と話していました。ただ、この発言に関して、娘は否定しているようです。

その日は、まず肺のCT画像を撮りました。肺のCTは、心筋梗塞で入院したとき以来、4年ぶりのことです。

CTには明らかに腫瘍と思われるものが映っていて、それが肋骨の背中側に達しているのがわかりました。

4年間のCTには、がんはなかったので、この4年の間にできて、それが大きくなったということになります。

がんはずいぶん進行しないと自覚症状が出ないものですが、骨に達していたことで、背中に痛みが出ていたのです。

中川先生からも言われましたが、肺の真ん中に同じくらいの腫瘍ができていたら、何の痛みもないので、がんの発見はもっと遅れていたことでしょう。

幸か不幸か、骨の近くで肺がんが大きくなったため、骨にあたって痛みを感じるようになったわけです。

※本稿は、『養老先生、がんになる』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

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