(写真提供:Photo AC)
令和4年度、厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」を実施しました。この調査によると、「末期がんと診断された場合、最期をどこで迎えたいか」という質問に対し、医療・介護従事者が最も多く答えたのは「自宅」だったそうです。そのようななか、訪問診療医の小堀鴎一郎(鴎の文字、正しくは鳥部と匸に品)先生は「在宅死は理想的な死かというと、必ずしもそうではない」と話します。今回は、解剖学者の養老孟司先生との共著『死を受け入れること ―生と死をめぐる対話―』から一部を、お二人の対談形式でお届けします。

病院で死にたくない

小堀 僕の母親は88歳で亡くなりました。その少し前から食べられなくなっていたのですが、医者嫌い、病院嫌いだったから、病院には絶対に行きたくない。医者の僕にも会いたくなかった。

結局、僕の同級生でうちにもよく遊びに来ていた友人の病院ならいいということでようやく入院が決まったのですが、病院から迎えが来た日の朝、僕が父親のために届けた薬と朝刊を手に持ったまま玄関のたたきで冷たくなっていました。

彼女が望んでいた通り、医者の手にかからずに死んだのです。

姉が言うには、身体に打ち傷があったらしく、日常的に転倒したりして、かなり具合が悪かったんだろうと思います。