母の希望

養老 うちの母も入院したくないと言っていました。母のことは僕の同級生が診てくれていて、同級生は僕と意見が一致していたんです。

それは、必要以上に調べないということ。調べるとまたあれこれいじることになりますから。自宅で死にましたが、前の晩は元気で、朝になったら、という。解剖する必要もない。95歳でしたから。

『死を受け入れること ―生と死をめぐる対話―』(著:養老孟司・小堀鴎一郎/祥伝社)

実は、その5年前にも一度倒れたんです。それで、兄と姉と僕と3人で相談して、姉は入院させようと言ったのですが、母はしたくないと。

僕は、どちらかというと母の希望を聞いてやりたかった。だけど、それで誰かが迷惑するのもどうか、と思いました。その辺が難しいところです。誰が面倒を見るかとなった時、兄が無職だったこともあり、兄が見るということになりました。