母との関係

秋吉 戸籍は変えていないはずですが、手紙には「まさ子」って署名していました。

母と私はとっても仲良しで、母は100パーセント、ううん、120パーセントくらいの信頼を寄せてくれていたと思います。味方にして理解者、一心同体の存在だった。

そんな母を基準としていたものだから、社会に放り込まれた時にちょっとした勘違いが生じました。母がしてくれたような手厚いケアを受けられないと、「ちょっとこれ、問題なんじゃない?」っていちいち思ってしまう、自覚のない傲慢さがあったんです。

下重 私にも似たようなところが。

秋吉 先ほどおっしゃっていましたよね、お母さまに猫かわいがりされていた。

私はふっと「今日、学校に行きたくない」と感じることがありました。母は叱ることもなく一緒にスーパーへ買い物に行き、私は上機嫌になりました。

下重 それでは、お母さまにはなんでも話せましたか。

秋吉 積極的にあれこれ話すわけではなかったけれど、会話を交わさなくてもわかり合える関係だったと感じます。

下重 波長が合う、ツーカーの仲。

『母を葬る』(著:秋吉久美子、下重暁子/新潮社)