母の献身
秋吉 母は器用な人でした。レーズン入りのそば饅頭やいちじくジャムなんかもお手製だったし、お寿司も握りました。「今日のお昼、おうどんでいい?」って訊くから、「うん、いいよ」と答えたら、台所でせっせとうどん粉をこねてるんですよ。
下重 すごい。
秋吉 洋服も仕立ててくれました。編み機でコートをつくり、そこに手縫いでモヘアの白い襟をつけてくれて。成長すると、糸をほどいてそれをカーディガンにして、その後、私も妹も着られなくなるとまたほどいて、セーターを編んでくれました。
下重 ものがない時代でしたからね。それにしても大変な献身ね。
秋吉 下着も手づくりだったの。
下重 まさかブラジャーも?
秋吉 さすがにそこまではしませんでしたが、カーテンの端切れで私のパンティーをつくってくれていました。他の女の子たちはみんなつるりとしたナイロンの下着なのに、私はごわごわのパンティー……というより、ズロースみたいなものを穿いていた。新学期の身体測定では自分だけが手づくりシミーズに、手づくりズロース。なんだか居心地が悪かった。
下重 シミーズにズロースね、わかりますよ。