源氏のなぐさめ

今なら、妊婦にとっては、逆効果ではないかと思われるような過酷な状況です。葵の上は「少し祈祷をゆるめてください。源氏さまにお話したいことがあります」と懇願します。

そばにいた葵の上の母親や父親は、きっと源氏への遺言を言いたいのだろうと、部屋を出て、源氏と葵の上の二人だけにします。

『美しい原文で読む-源氏物語の恋のことば100』(著:松井健児/中央公論新社)

源氏は、葵の上があまり激しく泣くので、もうこれが最期なのではないかと覚悟します。

源氏は、「大丈夫ですよ。たとえどんなことがあっても、あなたと私は夫婦なのですから、かならずまためぐりあえますよ」と、心をこめて葵の上をなぐさめます。