玉鬘の不満

そこへ源氏がやってきます。

玉鬘や女房たちが、物語に熱中しているのを見て、「物語は本当のことではないと知りながら、この暑いさかりに髪を振り乱して、書き写しているとは」と、からかいます。

『美しい原文で読む-源氏物語の恋のことば100』(著:松井健児/中央公論新社)

この言葉が玉鬘には不満でした。

「わたしには、本当にあったこととしか思えません」と拗ねて、使っていた硯(すずり)を押しやります。

源氏はあわてて、「これは失礼なことを言ってしまいました」と謝罪します。