イラスト:おおの麻里
年齢を重ねると、関節のトラブルを抱える人が増加します。50代以降の女性に特に多いのが、ひざ関節の痛みです。悪化すれば歩行に支障が出て、QOL(生活の質)に影響を及ぼす可能性も。そうならないための予防策を紹介します(構成=天田泉 取材・文=佐藤ゆかり イラスト=おおの麻里)

加齢とともに変形しやすいひざ

「肩、ひじ、指など、関節の痛みを訴える人のなかで最も多いのは、ひざ関節痛に悩む患者さんです」と話すのは、なかじま整形外科クリニック院長の中島啓樹先生。

「そもそも下半身の関節は体重の影響を受けやすく、ひざ関節は立っているだけで体重の3倍、歩行時はそれ以上の負荷がかかります」(中島先生。以下同)

ひざ関節を構成するのは大腿骨、脛骨、膝蓋骨(いわゆるひざの皿)などで、それぞれの骨は靭帯でつながっています。大腿骨と脛骨の接触面は動きを滑らかにする軟骨で覆われており、間にクッションの役割をする半月板があります。

「日本人の場合、大腿骨と脛骨の両方が少し外側へ湾曲しています。そのため、ひざの内側に体重がかかりがち。すると、ひざの内側の軟骨が摩耗してすり減ってしまうのです」

軟骨がすり減ると大腿骨と脛骨がぶつかって痛みが出たり、骨どうしがぶつかる衝撃が原因となり、滑液が増えて腫れたりする“変形性膝関節症”(図参照)に。

「変形性膝関節症は、女性に多い病気です。更年期以降は骨を保護しているエストロゲンの分泌が減少することによって骨粗しょう症になりやすく、関節ももろくなります。また、エストロゲンには靭帯を守る役割もあるため、分泌が減ることにより靭帯が衰えると、ひざの安定も悪くなるのです」

過去にスポーツや事故などでひざをケガしたことがある人は、より変形が進みやすいので注意が必要。加齢によって筋肉量が減少することも、ダメージの原因になります。

「女性は男性に比べて筋肉量が少ないうえに、年齢を重ねるにつれ、ひざ関節を支える太ももの筋力も減ってしまうためです」

女性に多い変形性膝関節症

※イラスト参照

 

『正常なひざ関節』

 

変形性膝関節症『初期・中期』
軟骨がすり減り、階段の上り下りなどでひざに負荷がかかると、骨どうしがふれて痛みが出る

『進行期』
軟骨が少なくなって骨がぶつかり、強い痛みが出たり、滑液が増えて腫れたりする