還暦を過ぎてからの友情

趣味は友だち作りの場ではない?(写真提供:Photo AC)

頻繁に会ってお酒を酌み交わさなくても、時々メールや手紙をやり取りするだけで、あるいは極端に申せば、何年も会わなくても、いつも心を通わせている関係をこそ、友だちというのではないでしょうか。

「この人と知り合えて良かった」と思えるような人には、一生のうちに一人でも出会えれば幸いだというもので、それだけでも人生は豊かなものになります。

私の経験では、若い時代だから良い友人に出会える、とそうきまったものでもありません。

私にとって、今もっとも親しい、そして互いに尊敬を以て付き合っている心友は、北山吉明先生という外科のお医者さんです。

しかも金沢の人で、私どもは若い頃にはまったく無縁の人生でしたが、あるとき声楽を仲立ちとして、ふとしたことから知り合いになり、たちまち意気投合、それからは二人でデュオ・ドットラーレという男声二重唱を結成して、東京と金沢で交互にコンサートを開催して歌を聴いていただくようになりました。

それだけでなく、今では無二の親友で、信州の別荘村でもそれぞれが一軒の別荘を持ち、折々にこの別荘村で落ち合って、楽しく歌い、談論風発し、食事を楽しみ、人生を論じて、倦(う)むことがありません。

還暦を過ぎてから知り合った仲であっても、そういう家族ぐるみ、無二の友情を持つことができたのは、人生の大きな幸いであったと、今では思っています。

これも趣味が結んだ友情なのですが……

※本稿は『結局、人生最後に残る趣味は何か』(草思社)の一部を再編集したものです。


結局、人生最後に残る趣味は何か』(草思社)

「趣味は何ですか?」と聞かれて、堂々と答えられる趣味がありますか?
 もしかすると「今は忙しいけれど、(将来)時間ができたらやりたい趣味がある」、という方も多いのではないでしょうか。
このように何となく「趣味」というのは、時間やお金にじゅうぶんに余裕がないとなかなか真剣に取り組めないもの…と思われがちですが、本書ではまったく逆の提案をします。
長年の実体験に基づく内容は、大いに刺激となり、参考になることでしょう。
また、趣味を通じて、自分らしい生き方を考え直すヒントにもなります。