友達のような関係ではない

猫とビールと中日ドラゴンズと中森明菜が大好きな母。

中森明菜のことを「明菜はね……」とまるで友人かのように名前で呼び、彼女の登場がいかに衝撃的だったか、その才能がいかに素晴らしいものだったか、その存在が世間の圧力によってどのように潰されてしまったかという一連の話を、今までに何万回も聞かされた。「私にはあの子の気持ちが分かる」と、特別な絆を一方的に感じているようだ。今も、彼女は元気でやっているのかを、友人のような立ち位置でいつも心配している。

中日ドラゴンズについては、毎日の試合はもちろん欠かさず観戦し、各種記事を読み込み、選手全員の毎日の体調まで把握しているようだ。「ヒロト、昨日の疲れ残ってないかな〜。大丈夫かな〜」と親みたいに想いを寄せている。

母とは、仲が悪いわけではない。くだらないLINEはするし、美味しいものを見つけたら多めに買って家に送ったり、お盆やお正月には子どもを連れて遊びに行ったりもする。しかし、二人でショッピングへ出かけたり、ランチをしたり、料理をしたり、温泉に入ったりはしたことがない。街で、SNSで、友達のような母と娘を見るたびに、そうでない自分たちを想い、少し胸が痛む。

母もそうなんだろうか?