noteが主催する「創作大賞2023」で幻冬舎賞を受賞した斉藤ナミさん。SNSを中心にコミカルな文体で人気を集めています。“「愛されたい」が私のすべて。自己愛まみれの奮闘記、笑い飛ばしてやってください”という斉藤さんによる、すべてをさらけ出すデビューエッセイ集『褒めてくれてもいいんですよ?』より一部ご紹介します。
私と母の関係
私と母の関係は、少し変わっている。
「ナミ。明日って何時頃家にいる?」
「午前中は事務所で仕事してる。午後ならいるよ」
「わかった。野菜たくさんあるから持っていくわ」
そう言って、家にいない午前中にやってきて、私に会わずに玄関に荷物を置いて帰っていく。
母の家はそう近くない。車で30分以上はかかる。せっかくの野菜が炎天下に数時間おかれて、しなしなになってしまっていることもある。私が家にいる時間に来るときは、一旦は部屋にあがるものの、荷物を置いて猫をひとなでし
「じゃあそろそろ行くわ」
と、5分も経たないうちにそそくさと帰ってしまう。いつもそうだし、私も照れ臭くて恥ずかしいので、いざ二人きりでゆっくりお茶……となっても、どんな顔で何を話していいのか、ドキマギしてしまうだろう。
「野菜持ってきてくれてありがとう。子どもたちも喜んでる」
子どもたちが美味しそうに食べている写真を添付してLINEでお礼をする。子どもを挟むと会話もしやすい。