小学3年生のとき、切実にお金がほしかった
子どもの頃の話。我が家はめちゃくちゃ貧乏だった。
父には常に借金があり、いつも「返済日お忘れでしたか?」の電話が来ていたし、督促状なんかも割とカジュアルに届いていて、家のそこらじゅうで見かけた。父の収入の波が激しすぎてしょっちゅう引越しと転校を繰り返し、家のグレードもコロコロ変わっており、情緒が一向に安定しなかった。
私が小学校3年生くらいの頃は特に貧しかった。両親と私と弟の家族4人で2LDKのアパート暮らし。エアコンもなく、食卓には時折、ご飯に前日のお味噌汁をかけただけの、いわゆる「ねこまんま」というメニューが出るレベルで、当時はそこまで気にしていなかったが、大人になりご飯を作る立場になった今思い返すと、まあまあえぐい状況だったんだな……と思う。
私と弟にお小遣いなどはなく、誕生日やクリスマスのプレゼントも、お年玉もなかった。当時みんなが持っていたファミコン(ファミリーコンピュータ)やゲームボーイももちろん持っていなかった。
小3にもなると少しずつ周りの子はお小遣いをもらい始め、駄菓子屋でお菓子を買ったり、自販機でジュースを買ったりするようになる。そんな中、お小遣いのない私は「喉乾いてないからいい」「お腹空いてないから買わない」と誤魔化したり、みんなが美味しそうに食べたり飲んだりしている様子をなるべく見ないように、かつ、気まずくなく見えるよう努力した。
哀れな貧乏人を見かねて、近所に住むリッチなクラスメイトのアヤノちゃんは「ナミちゃんもいる?」とお菓子を恵んでくれようとした。子どもの素直さは本当に残酷で、彼女の優しい言動はいつも私を傷つけた。私のことは放っておいて! そんな目で見ないでくれアヤノちゃん。さっさとこの時間をおしまいにしてくれ! といつも心で唱えていた。
転校生ということで、ただでさえ友達作りにハンデのある状況。そこへ貧乏も重なる。絶対絶命だ。いよいよまずい。どうにかして遊ぶお金を捻出しないと……! 切実に「お金が欲しい」と思った。