ビジネスパートナーとなった隣の席のホリくん

悩んでいたちょうどその頃、夏休み直前のある日の学校でのこと。隣の席のホリくんが夏休みの宿題が記されたプリントを見ながら「あー、読書感想文一番やだわ」と言った。

ホリくんは、ちょっとポッチャリしていてやんちゃな男の子だ。いつも手首にたくさん輪ゴムをはめていて、何かあるたびに指に引っ掛けてゴム銃にして攻撃してくる。私も何回か標的になっていた。「消しゴム貸して」と言われ、「やだ」と返事をするとバシッと撃たれる。理不尽すぎる。

「読書感想文なんて楽勝じゃん。どう考えてもラジオ体操が一番最悪」

私は言った。

日記も算数ドリルも感想文も、やれば終わる。でもラジオ体操だけはそうはいかない。せっかくの休みなのに、なんで毎朝早起きしなきゃなんないんだ。まとめて終わらせられなくて、毎日行かないといけない。こんな意地悪で最悪な宿題は他にない! と思っていた。

イライラしていた次の瞬間、ホリくんがこう言った。

「じゃあお前のラジオ体操行くから、俺の読書感想文書いてよ」

……なんてことだっ! ホリくん! あんた天才なのでは?

ポッチャリしている彼が突然シュッとして見え、後ろからピカーッと光が瞬きだし、なんだかかっこよく思えてきた。

「そうする!」

ホリくんに自分のラジオ体操カードを渡し、ホリくんの原稿用紙を受け取った。今年の夏休みは最高だぞ! と思った。

夏休みが始まるまでの数日間、ホリくんと私だけがその秘密の計画を胸に秘めていることに妙にドキドキして、目が合うたびに二人でニヤニヤしていた。なんだか恋が始まりそうな予感もしたが、ホリくんがかっこよく見えたのはあの一瞬だけで、あまりにも私のタイプとはかけ離れていたため、結局その後もビジネスパートナー止まりだった。