2024年12月5日のNHK『午後LIVE ニュースーン』の「トークシュン」テーマは、”よりよく生きるヒント「生きものとして考える」”。生命誌を研究する中村桂子さんが登場し、豊かさの本質を見つめ直します。次世代への「いのちのバトン」のつなぎ方を綴った中村さんの著書『老いを愛づる 生命誌からのメッセージ』より一部ご紹介した記事を再配信します。
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生命誌研究者でJT生命誌研究館名誉館長を務める中村桂子さん。1936年生まれの中村さんは生命学分野の科学者としてレジェンド的な存在です。その中村さんが、人間がなぜ戦争をするのか、核兵器をつくったのかということについて考えてみると「そもそも私たち人間は本当に賢いと言えるのか」という疑問にぶつかってしまったそうで――。
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生命誌研究者でJT生命誌研究館名誉館長を務める中村桂子さん。1936年生まれの中村さんは生命学分野の科学者としてレジェンド的な存在です。その中村さんが、人間がなぜ戦争をするのか、核兵器をつくったのかということについて考えてみると「そもそも私たち人間は本当に賢いと言えるのか」という疑問にぶつかってしまったそうで――。
核兵器をつくってしまった「ホモ・サピエンス」
そもそもなぜ核兵器などという非人道的なものをつくったのかと歴史をひもときますと、そこにはあたりまえですが戦争があります。
物理学の研究を進めているうちに、原子の核の中に大量のエネルギーが閉じ込められていることがわかり、これを瞬時に爆発させればこれまでにない威力の爆弾がつくれることがわかってきました。
しかし、そんな恐ろしい爆弾をつくろうとは思わない。当時の物理学者はそう考えていました。人間として当然ですね。けれども第二次世界大戦でドイツ・イタリア・日本が組み、イギリス・アメリカ・中国などと戦う中、戦火は日に日に激しくなりました。新しい科学技術を駆使した航空機での爆撃など、民間人を巻き込んだひどい戦争になってきたのです。
新しい兵器合戦になり、その中でも最も威力が期待できる核兵器に目が向きました。独裁者ヒットラーに支配されているドイツから、アインシュタインなどユダヤ系の学者はアメリカに亡命し、そこで物理学の研究をしていたのですが、ドイツに残っている優秀な学者が、原子爆弾を開発しているのではないかと心配になったのです。
先に開発されたら大変です。そこでついにアメリカにいる優秀な物理学者を集めて「マンハッタン計画」という原子爆弾開発のプロジェクトを始めます。その結果つくられた原子爆弾が広島と長崎に落とされたことは、どなたもご存じでしょう。その悲惨なことも。