若い方たちが、大事なことは大声で言って下されば

アフガニスタンで日本人と名乗ると、すべての人が「カカ・ムラド(中村医師の愛称)」と言って笑顔になるとのこと。すべての人を信じ、すべての人がよく生きることを願って地道にお仕事を続けられたからこその人々の反応でしょう。まさに善悪を超えての尊敬を引き出したすばらしい方です。

爆弾を積んだドローンやミサイルを飛ばすために知恵とお金を使うのでなく、中村医師のような活動の支援こそ大事だとは誰もが思うことではないでしょうか。「平和なんてたわ言、現実を見ろ」と偉そうに言う人の言葉ではなく、中村医師の言葉に耳を傾けましょう。

年をとると、耳の聞こえが少しずつ悪くなるのは仕方のないことです。でも、真剣に耳を傾ければ大事な声はまだまだ聞こえます。若い方たちが、大事なことは大声で言って下さればありがたいことこの上なしです。

 

※本稿は、『老いを愛づる-生命誌からのメッセージ』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


老いを愛づる-生命誌からのメッセージ』(中公新書ラクレ)

白髪を染めるのをやめてみた。庭の掃除もキリがないからほどほどに。大谷翔平君や藤井聡太君、海の向こうのグレタさんのような孫世代に喝采を送る――年をとるのも悪くない。人間も「生きもの」だから、自然の摂理に素直になろう。ただ気掛かりなのは、環境、感染症、戦争、競争社会等々。そこで、老い方上手な先達(フーテンの寅さんから、アフガニスタンで井戸を掘った中村哲医師まで)に、次世代への「いのちのバトン」のつなぎ方を学ぶ。レジェンド科学者が軽妙に綴る、生命誌38億年の人生哲学。