母はまさに雷にでも打たれたような表情で立ち尽くし、次の瞬間、「ごめんなさい、ごめんなさい」とボロボロ泣きだしたのです。それは、こちらのほうが驚いてしまうくらいの激しさでした。
そして「そんな苦しい思いをさせているとは思わなかった」と、ひたすら泣いて謝りました。「ただ、元気づけたかっただけなの」「応援して力になりたかった」と言われたので、「わかってたよ。だから私も何も言えなかった」と、私も泣きながら訴えました。
甘えさせてほしいと思うのは弱さだと、ずっと自分に言い聞かせてきた。そう本音を語ると、「なんで気づいてあげられなかったんだろう」と言って、私をギューッと抱き締めてくれて。それから二人で泣きながら、明け方まで何時間も堂々巡りの謝り合いが続きました。
翌日から、母はそれまでとはまったく別人のようになったのです。私が「つらい」と言うと、全部受け止めてくれるようになって。
お風呂からあがると、「髪の毛乾かしてあげようか」とドライヤーを当ててくれたり、「顔のマッサージしてあげる」と、膝枕をしてくれたり、物理的に甘やかしてくれることも増えました。
私はこれまでを取り戻すかのごとく子ども返りし、いい歳をしてはたから見たら引いてしまうほど、思いきり甘えることができるようになったのです。母は母で、久しぶりに私を小さな子どものように甘えさせるのが嬉しそうな様子でした。