ペットが教えてくれるお別れの時
とはいえ、家族と同様に大切な存在だからこそ、命を終わらせるというのは難しい決断でしょう。ペットと話ができて、希望が聞けたらどんなにいいか……。安楽死を決めたとしても、そのタイミングをいつにするのか、お別れの時期の見極めもとても難しいものです。
私自身、飼っていた犬ががんになり、治療法が尽きて安楽死を提案されたことがあります。その際、獣医からこんなことを言われました。「最後は安楽死をさせるべきでしょう。その時期は本人が教えますよ」と。ペット自身がお別れの時を教えてくれる、飼い主ならそれがちゃんとわかるというのです。それからしばらくして、その意味がわかりました。私の愛犬は、散歩と食事、そして飼い主である私との交流を何よりの喜びとしていましたが、それらを順番に失っていったのです。以前なら足が不自由でも散歩に行きたがり、私が体を支えてあげるとなんとか歩いて外に出ようとしていたのが、しなくなりました。
次に大好きなおやつを口元に持っていっても興味を示さず、食べる意欲もなくし……。やがて私が体をなでても痛がるような声を出すだけになり、もう痛みと苦しみしかないとわかったのです。いよいよお別れの時が来たのだと感じ、安楽死を決断。もちろんこれは私の愛犬の場合です。それぞれのペットによって、また動物の種類によって、何が喜びで何が苦しみかは違うでしょう。それは飼い主とペットとの日頃からのコミュニケーションでしかわからないことだと思います。つまり、飼い主だからこそペットが教えてくれるお別れの時がわかる、ということなのです。