実際の原因

夫は名門大学を出て、誰もが知る大企業に就職、順調に出世して、最近まで社長レースにも参加していたそうです。ただその企業の本社の社長にはなれず、関連会社の社長に就任しました。夫はドラマ『半沢直樹』のような権力闘争の世界にいたわけです。きっと、いろいろつらい目にもあっていたでしょう。

一方、相談者の女性は専業主婦で、夫のそうした社内状況について関心がありませんでした。社長レースに負けても、クビになるわけじゃないし、何も問題はないじゃないかと気にしてもいませんでした。

『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか? 夫婦関係を改善する「伝え方」教室』(著:岡野あつこ/講談社)

万が一クビになったところで、夫は名門大学出身で関連会社とはいえ社長にまで上りつめたわけだし、すぐ再就職できる、くらいに思っていたそうです。

この夫婦には子どもが3人いました。海外に留学している子どももいて、教育にはかなりお金をかけているようでした。

その費用を捻出するために、夫は必死に働いて出世してお金を稼いでいたわけですが、妻はその苦労をあまりわかっていませんでした。

だから妻がすべて悪い、ということではありません。夫のほうにも反省すべき点がいろいろありました。

夫は真面目で寡黙、あまり自分のことを語らないタイプでした。家に帰っても、会社でこういうことがあったとか、部下がこういうことをした、という話をしたためしがありません。社内権力闘争のことも「どうせわからないだろう」と妻に説明していなかったのです。

妻が「夫は会社でうまくやっている」とばかりにノー天気にかまえていても不思議ではありません。