重三郎の人物像

どんな子供時代を過ごしたのでしょうか。子供の頃からできがよかったのでしょうか。1772年(安永元年)、青年期の重三郎は、初めて自分の書店を出しました。場所は義理のお兄さんが経営する五十間道の茶屋の軒先です。名前は耕書堂とつけました。

そこからは早かった。遊郭のガイドブックやお勤めする人気風俗嬢のグラビア誌をつくると、それが大当たり。

吉原生まれのオシャレな書店経営者として、トレンドの中心にいた重三郎は、遊び仲間として、文化人にも強いコネクションを持つようになります。その関係から、次々と、人気作家や絵師たちとコラボ作品をつくり出します。これが、バカ売れするのです。

重三郎は、小説や絵本の販売の仕方も新しく開拓し、一躍江戸出版業界の寵児として踊り出ます。

きっと、情に厚く、人から信頼される人物だったのでしょう。仲がいいから、知ってるからなんて理由「だけ」で人は動かないものです。ましてや、相手は、気難しい作家連です。才能を認め、理解し、色々と面倒を見てあげたのではないでしょうか。

そうでなければ、一緒に仕事はしません。クリエイターには、そういう面倒なところが、ままあるものです。小さな気遣いの積み重ねが大きなビジネスチャンスを生んだと考えられます。

※本稿は、『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』(興陽館)の一部を再編集したものです。

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べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』(著:ツタヤピロコ/興陽館)

辣腕編集者であり天才出版人、蔦屋重三郎。

江戸・吉原に生まれた一人の男はいかに生きて、出版業界の礎を築きあげていったのか。

生きざま、ビジネス、才覚、そのすべてがわかる本。