弁護士の増加という社会現象

その背景には、弁護士の増加という社会変化もあるでしょう。昔とくらべると、「相続のご相談を無料で受け付けます」と宣伝する法律事務所が多くなりました。

相続がらみの案件は、目の前に現に存在する遺産をどう分配するかという話です。

相手に支払い能力があるかどうかわからない損害賠償請求の案件などとくらべると、弁護士にとって「確実に稼げる仕事」だといえるでしょう。

そのため、相続問題をセールスポイントとしてアピールする法律事務所が多くなったのです。

でも、それだけが原因ではありません。人々の権利意識が昔より高まったことも、この案件が増えた大きな要因だと思います。

かつての日本社会は長男が家督を継承するのが当たり前とされていました。法的には相続の権利がある親族であっても、それを表立って要求するのがためらわれました。

しかし今は、伝統的な「家制度」に対する感覚が薄れてきたこともあり、それぞれの親族が個人の権利をしっかりと主張するようになってきたのです。