ELF発想で英語を学び、使うときの作戦
文化の違いを越えてコミュニケーションをする方法には、多くの研究があり本記事では詳しく触れないが、この複雑な文化の議論を理解しやすくするため、私はELF発想で英語を学び、使うときの作戦をこう提案する。
(1)ELFでは、その場にいる個人すべてが、それぞれ異なるコミュニケーション文化をもっていることを考える。自分の文化だけで判断しないように注意する。
(2)基本的には、参加者のすべての文化を平等に尊重する。常に、自分と相手の文化や視点の差異に配慮する。
(3)しかし、個々の文化の違いが大きいと互いの理解が難しい。そのため、全員がある程度知っている米英文化を参照し、コミュニケーションを図る。ただし、適切さの判断は必要だ。たとえば、“Hey guys!”というくだけたよびかけはアメリカでは一般的な挨拶だと思っても、その場に適しているか考える。
(4)米英文化を参照してコミュニケーションをしながら、相手の文化を観察する。相手の誤解を招かないように、不快感を与えないように、その場に最も合った文化を作っていく。
また、一見矛盾するが、彼我の文化の相違点を観察していると共通点も多く見つかるだろう。たとえば、先に挙げた断り方の違いの文化も、率直に話してみれば、違う断り方の背後に相手に不快な思いをさせたくないという共通した配慮があったりする。
ELFと文化は、複雑で難しい。しかし、コミュニケーションを通して長期的で良好な関係を作るためには欠かせない視点だ。
●注
(1) Osland & Bird, 2000
(2) Cultural Atlas:オーストラリアの教育者・研究者の作成した、「文化」を考えるサイトより著者意訳:(https://culturalatlas.sbs.com.au/japanese-culture)
(3) Holliday, 2011
(4) Baker, 2015
※本稿は、『使うための英語―ELF(世界の共通語)として学ぶ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『使うための英語―ELF(世界の共通語)として学ぶ』(著:瀧野みゆき/中央公論新社)
自分の考えを英語で伝えたい、「使うため」の英語を学びたい!
そんな人々に本書は、ELF=「世界の共通語(リンガ・フランカ)としての英語」への発想転換を提案する。
発音やリスニングからテクノロジーの活用まで、「知っている英語」を「使える英語」に変えるための具体的な英語勉強法を紹介する。