交通事故の被害者を「タダメシ」と言う医師

その後、会社を半日休んで母の通院に付きそった。どうしても会社を休めない時は、ヘルパーさんを頼んで付き添ってもらった。A病院は脳の再検査だったが、B病院の足の甲の怪我はなかなか完治せず、傷があったのか膿も出てきた。母は待合室でじっとしていられず、帰りたがった。

私は診察室の近くにいた外来の看護師さんに母の順番をたずねた。看護師さんは医師に聞きに行った。すると医師は「あのタダメシね。タダメシはあとあと」と言う声が聞こえた。

イメージ(写真提供◎Photo AC)

交通事故の被害者は病院と保険会社が連携をとって窓口での支払いがないことを指しているのだと、私は思った。この病院は交通事故の患者をそう言うのか?あの医師だけがそう言うのか?怒りよりもあきれた。

私は名前を呼ばれると、いつも通りに医師に会い、母の良くなった足を診てもらった。保険会社に治療の終了を証明してもらいたかったから、感情は抑えた。

保険金は唖然とするほど少なく、疲労困憊した私への慰謝料などもちろんなかった。

(終)

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