エアコンと高齢者
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連載「相撲こそわが人生~スー女の観戦記』でおなじみのライター・しろぼしマーサさんは、企業向けの業界新聞社で記者として38年間務めながら家族の看護・介護を務めてきました。その辛い時期、心の支えになったのが大相撲観戦だったと言います。家族を見送った今、70代一人暮らしの日々を綴ります

デイサービス拒否の母に幼稚園の弁当を思う

人はこれまで自分が経験したことのないことを、思わぬ時に経験することがある。

私は子供を育てたことがないので、自分の子供が他の子供と同じことができないことに対する悩みやイラ立ちを味わったことがない。それを認知症になった母から味わうとは思ってもみなかった。

私の友人たちは、「うちの母はデイサービスに通って楽しんでいる」、「洋服を回りの人に褒められてから、デイサービスの日はそればかり着たがる」と言い、「あなたのお母さんは何でデイサービスに行かないの?会社にいる間、預かってくれるのよ」と言われた。私は焦り、傷ついていた。

母の認知症がひどくなってきたので、介護認定を受け、ヘルパーさんが家に来るようになった。ところが、母はドアに鍵をかけてしまい、ヘルパーさんを家に入れなかった。会社にいる私に「入れないのですけれど」と、訪問介護の会社から電話が入るようになった。ケアマネジャーさんも私も、デイサービスに行くことを母に薦めたが、母は拒否し続けた。

 「何でデイサービス行かないのよ!」と、私は母に怒鳴るようになった。しかし、自分が通っていた幼稚園のことを思い出して、怒鳴るのをやめたのである。

その幼稚園は名門でもなんでもない、近所にある幼稚園だった。しかし、園児の教育や生活態度に厳しく、折り紙がうまく折れない、歌をうまく歌えないなどの場合は、母親を幼稚園に呼び、母親に折り紙を折らせ、歌を歌わせた。当時は専業主婦が多くて、自宅で母親が教えて、他の園児と同じレベルにしろ、という方針だった。そのため母親たちは、子供を他の子供と同じようにしようと必死だった。

私の母も園長先生に呼ばれた。私のお弁当の食べ方が変なのだそうだ。「ご飯とおかずを交互に食べるのが正しいのに、おかずだけ先に全部食べて、その後にご飯を食べるのは、なにごとだ」と、園長先生は言うのである。母は、園長先生の前でお弁当を食べる訓練をさせられたわけではないが、家に帰ってきてから「何でそうなるのか?」と私に聞いた。

私は母にはっきりと言った。「デンプ(ご飯の上にかけるふりかけ)が好きで、それを後でゆっくり味わいたいから、ご飯は後なのだ」と。次の日から、私は園長先生の推薦する皆と同じ食べ方をするようになった。なぜなら、母はご飯の上にデンプをかけるのを止めたからだ。デンプは自宅で食べる夕飯のご飯の上にかけられていた。

お弁当
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