コロナ禍に移住者が増えた自治体は2割にとどまる

2021年(令和3年)に、一般社団法人移住・交流推進機構が実施した「コロナ禍の自治体移住調査」は、コロナ禍と自治体による移住促進の関連性をわかりやすく描き出しています(注1)。

まずは、「パンデミックによって移住相談・移住者が増えた」という説について検証します。調査結果では「移住相談、問い合わせが増えた」が43.6%、「移住者が増えた」が21.8%に対して、移住相談や移住者数の増減をめぐり「特に変化はない」と回答した自治体が55.0%でした(図表1)。

<『数字とファクトから読み解く 地方移住プロモーション』より>

この結果から、移住者の増加という点でコロナ禍の恩恵を受けた自治体は半分以下もしくは一部に限られ、実は半数以上の自治体では、コロナ禍でも移住動向の変化がなかったことがうかがえます。

『数字とファクトから読み解く 地方移住プロモーション』(著:伊藤将人/学芸出版社)

コロナ禍は移住相談会や移住定住イベントへの出展開催も難しかったり、移動の自粛が要請されたりしたため、実態よりも低く数値が出ている可能性もあります。しかし、こうしたデータは、つい私たちが口にしがちな「コロナ禍で移住者が増えたよね」という肌感覚が、必ずしも広く当てはまらない可能性があることを教えてくれます。

注1: 一般社団法人移住・交流推進機構「令和2年度 コロナ禍の自治体移住調査 報告書」2022、https://www.iju-join.jp/f-join/R2_research.pdf