内閣府が令和5年に公表した「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、東京圏在住者のうち地方移住に関心があると答えた人の割合は35.1%だったそう。そのようななか、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員、講師の伊藤将人さんは「『地方移住がブームです』という言説自体が、地方移住ブームを構築している側面があるのではないか」と指摘しています。そこで今回は、伊藤さんの著書『数字とファクトから読み解く 地方移住プロモーション』より一部を抜粋してお届けします。
金銭的な移住支援の効果は一過性にすぎない
注目される大胆な金銭的支援
近年、注目を集めた移住促進施策があります。それが、宮崎県都城市による「全国どこから移住しても500万円」の移住応援給付金です(図表1)。
都城市によれば、2022年度まで数百人だった移住者数が、この施策などにより2023年度には約3700人となり、13年ぶりの人口増加を達成、多くのメディアで移住促進の優等生、成功例として取り上げられました。
この事例が注目を集めたもう1つの理由が、移住応援給付金の財源には、日本一の金額を集めたふるさと納税の寄付金が充てられたということでした(注1)。
この施策は、大きな話題を呼びました。移住者数が増加に転じたこともさることながら、「ふるさと納税寄付金を活用して移住者数を増やす」というアイディアによって、自治体間競争における勝ち組自治体がますます勝ち組としての地位を確立できることが浮き彫りになったためです。
ふるさと納税や子育て支援、そして移住促進など競争が激しい政策分野において、多数の負け組自治体が勝ち組になることがいかに難しいか、自治体の格差が開くばかりであることを多くの自治体は痛感させられたのです。では、果たしてそれは、公正で持続可能な移住促進の助けになるのでしょうか。
注1: 南日本新聞「市長も驚いた…移住者が前年度8.5倍、13年ぶり人口増に転じる ふるさと納税日本一の都城市が仕掛けた子育て支援策」2024年4月26日、https://373news.com/_news/storyid/193969/