金銭的支援による移住促進の効果は、中長期的には薄い

ここまでみてきたように、地方移住を促進するために大胆な金銭的支援策を実施してきた自治体は、過去数十年の間にいくつもありました。

しかし、それらの中で中長期的に金銭的支援を継続してきた事例は少なく、一時的に転入者数や移住者数の増加に寄与したり、新聞雑誌で取り上げられたりしても、結局、人口動態に長期的にプラスな影響を与えるものはほとんどありませんでした。

過去の事例からわかるのは、大胆な金銭的支援は一時的には社会的注目を集め、移住者の増加につながりますが、中長期的にみれば効果は薄く、持続可能な施策ではないということです。

冷静に考えてみれば当然ですが、個人の移動の選択は金銭的支援のみで決まるものではなく、地域の雇用や子育て環境、教育、医療、気象条件、交通アクセス、近隣との人間関係など様々です。

さらに、全国の転入者が多い自治体(東京都特別区や大阪市、横浜市、札幌市、福岡市)は、大胆な金銭的支援を行なっているから人が集まっているわけではありません。