「本屋」は江戸のニュービジネス
ここでは、蔦重が身を置いた江戸の出版業界について、詳しくお話ししていきましょう。まず、「本」は江戸のニューメディアであり、「本屋」は江戸のニュービジネスでした。
平安時代の昔から戦国時代まで、本を所持したいという人は、本の所有者から借りて書写し、写本を作る必要がありました。印刷本はごく少数あるだけで、それもごく一部の特権階級や富裕層が所有するものだったのです。
ところが、江戸時代、木版による印刷技術が向上し、紙の値段も下がって、本を大量に印刷できるようになります。
そして、天下太平の世の中、本を読みたいという引きが増え、そのニーズに応えるべく、「本屋」が登場したのです。
そうして、庶民でも、本を比較的安価に「借りられる」(買うのは依然高価でした)時代が訪れたのです。