素晴らしい師との出会いで生まれた医者としての自覚

本気で心を入れ替えたのは、東京の杉並区にある高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科で勤め始めた頃からです。

大きな転機となったのは、そこで老年精神医学者の父のような存在の竹中星郎(たけなかほしろう)先生(故人)に出会えたことでした。

『ヤバい医者のつくられ方』(著:和田秀樹/扶桑社)

これまで35年以上にもわたって高齢者専門の精神科医としてのべ6000人以上もの患者さんたちと向き合い、老年精神医学の世界の臨床でならそうそう負けることはないと自負できる今の私があるのは、竹中先生に多くのことを教えていただいたおかげです。

すっかり改心した私は、どうすれば患者さんの気持ちが理解できるか、どういう伝え方をすれば患者さんを安心させられるかなども先生の姿から真剣に学ばせていただきました。

コミュニケーションが得意でないという自覚があったからこそ、自分なりに勉強もしました。

多くの患者さんたちが「先生に診てもらってよかった」「これからもずっと診てもらいたい」と言ってくださるのも、私が患者さんの気持ちに寄り添える医者になれた証拠ではないかと思っています。