重三郎の魅力
こうした儀礼的な挨拶から始まった彼らの交際(つきあい)だが、やがて3人は年こそ若いが「志気英邁、不修細節、接人以信」という青年実業家重三郎の傑出した人物に対し、次第次第に強い信頼感と将来性を感じていったのではないかと思われる。
重三郎は人の心をとらえる人間的な魅力を豊かに持ちあわせていたらしく、やがて彼の周りには種々様々な芸術家達が集まってくるようになるのである。
喜三二にしても、重政、春章にしても、重三郎の器量に魅せられ、彼の人間的磁力に引きよせられていった人達のうちの一人と言ってよいだろう。
こうして重三郎と3人の結びつきは成立したと思われるが、とくに喜三二、重政との繋がりは深く、彼らは自分たちよりも年下ではあるが、将来の大器を予感させる重三郎に対し、その後も長く変わらぬ好意を寄せていくのである。