オリンパスが「監理銘柄」に

時間を戻すと、雑誌の記事を基に最初に事件を「告発」したのは、11年に社長に就任したマイケル・ウッドフォード氏だったが、これだけの巨額損失と、それをめぐる不正会計が事実だとすれば、それはオリンパス本体も大ピンチに陥ることを意味した。

「悪質で巨額、かつ長期の損失隠し」というのは、当時の東京証券取引所の基準からすれば、「上場廃止」に相当したからだ。

『「第三者委員会」の欺瞞-報告書が示す不祥事の呆れた後始末』(著:八田進二/中央公論新社)

ちなみに、その5年前には、堀江貴文氏のライブドアがわずか50億円の粉飾で上場廃止になっていた。実際、11年11月10日、4~9月期決算を法定期限(11月14日)までに提出できない、と発表したオリンパスは、東京証券取引所から「監理銘柄」(上場廃止の可能性がある銘柄)に指定される。

こうした一連の事態に慌てたのは、当のオリンパスだけではなかった。「東洋経済オンライン」の同年12月20日付の記事が、当時の「裏事情」を語って余りある。

「(略)金融庁は『事態の鎮静化を図り、課徴金処分で済ませようと動いている』(大手監査法人幹部)。また『経済産業省や厚生労働省も、上場廃止や外資による買収などは、絶対させない意向だ』(外資系銀行幹部)。官主導の護送船団方式による“救済”の道筋が、用意されつつある」

要するに、低迷が続く日本のものづくりの中で、盤石の世界シェアを誇るオリンパスの内視鏡事業を外資に渡すなど罷りならん、ということである。