企業や団体が不祥事を起こしたとき、外部の専門家に委嘱して設置される「第三者委員会」。本来は問題の解明や事実関係の明確化を図るための組織ですが、「第三者委員会報告書格付け委員会」に所属する会計学者の八田進二さんは「大半の第三者委員会は、真相究明どころか、身の潔白を『証明』するための<禊のツール>として機能している」と指摘しています。今回は八田さんの著書『「第三者委員会」の欺瞞-報告書が示す不祥事の呆れた後始末』より一部引用、再編集してお届けします。
オリンパスは第三者委員会に救われた
残念ながら、日弁連ガイドラインが作られた後も、不十分な報告書の量産が続いている。しかし、第三者委員会自体の認知度、ある意味「ステータス」は、確実に高まってきている。
それを象徴することになる事件が表面化したのは、2011年7月のことだ。記憶に新しいオリンパスの不正会計事件である。
簡単に振り返っておけば、悪事の発端は、一部経営幹部がバブル期に行った本業とは無関係の金融商品への投資の失敗だった。その後、彼らは一千数百億円に上る損失を「飛ばし」という手法で隠蔽し続けた末に、企業買収費の水増しなどでその解消を画策したのだった。
隠蔽が過去20年間にも及んだこと、経営トップが主導した不正であったことは、強い衝撃を持って受け取られた。
当時の社長、副社長などが、金融商品取引法違反で東京地裁から執行猶予付きの有罪判決を受けたほか、長年の損失隠しを見抜けなかった二つの監査法人には、金融庁から業務改善命令が出された。