「小娘に、/わかるものか」と/気炎上げ

幸齢者のいちばんの強みは何でしょうか?

私は「経験」だと思っています。多くの方は、自身の経験をないがしろにしてしまっているように見えます。

そして「テレビで言ってたから」とか「あの人がそう言うから」などと、他人の言いなりになっているようにも見えるのです。

とてももったいないですよね。みなさんの「生きた経験」のほうが、よっぽど頼りになるのに……。

例えば、私はおいしいラーメン屋さんを探すのが趣味です。ネットを検索すると山ほど出てきます。

でも、私が何より大事にしているのは、自分の経験です。年間200店ほど回っていますからね。舌も肥えるし、味覚も磨かれています。

もちろん「うわ、なんだこの店は」という失敗も1度や2度ではありません。でも、自分の体を使って得た経験だからこそ、信頼できるわけです。

それが「経験の強み」です。強みは人それぞれです。お花、お茶、推し活、宝塚、マージャンなどの趣味も経験です。

長年やってきた仕事なら、さらに強力な体験と言えるでしょう。ご自身の経験に、もっと自信を持ちましょうよ。

その体験は、物事の善し悪しをはかる「物差し」にもなります。経験をないがしろにするのではなく、独自の経験で培(つちか)った「物差し」で意見を言う。

病院の患者さんと話していると面白いですよ。「ああ、そういう物の見方、考え方があるのか」と勉強になります。

テレビに出るコメンテーターなんかより、社会の荒波に揉もまれてきたみなさんのほうが、よっぽど確かな「ご意見番」になれると思うのです。

女80歳の壁』(著:和田秀樹/幻冬舎)