「永遠なる祈り」(命のタペストリー) 上段のつがいの鳥は、円の上部のもの

 

能登地方の豊かな自然に囲まれ、「生き物や野の花とおしゃべりするような子どもでした」。幼い頃の夢はオペラ歌手か、幼稚園の先生。しかし夫となる人に強く望まれて20歳で結婚、ほどなく子どもを授かる。

「当時はおしめや産着を手縫いする時代。実家の母に習ってなんとか縫い始めました」。生まれたての赤ん坊を包む産着を作るとき、ふと家庭科の授業で習ったフランス刺繍を入れようと思いつく。白い布に咲いたピンクの花。「幼い頃『あなた可愛いわね』って話しかけていた、野の花を思い出しました。好きなものに愛情を注いだ当時の気持ちが、母となる喜びと重なって」。

長男の服や部屋飾りにも夢中で刺繍をあしらった。そんなある日、小児科で待合室に飾られた刺繍の額が目に入る。美しい光沢を放つそれは、伝統技法・日本刺繍だと教えられた。

「その頃の私は結婚や出産で夢をあきらめて、『一生このままなの?』と不満をため込んでいて。昔から着物は好きだったので、子育ての傍ら日本刺繍を学ぼうと思いました」

ランプシェードの刺繍は灯をともすと違う表情をみせる