「命ひとつひとつを抱いて」(桜日記 四十歳)

母を目指して、80歳の決意

アトリエで開く教室には、さまざまな年齢の女性たちが集う。

「同じ糸と構図でも完成品は人それぞれ。昨日と今日でも微妙に仕上がりが違う、そこが手仕事の面白さ。いつでも同じものができる機械刺繍ではないですもの。そこに表れる人の心を感じ取っていただければと思います」。

手鏡やブローチなど愛らしい品々から、展覧会に向けた大型のタペストリーまで幅広い創作を続ける草乃さん。

10年ごとに発表する「桜日記」と題した作品では、80歳になった2024年の春、炎のような構図の桜を施した。

「103歳まで創作に励んだ母のように、命が燃え尽きるまで自分自身を見つめていきたい」。その指先からは今日も、自然の息吹を秘めた美の世界が生み出されていく。

「年を重ねてこそ熱く」(桜日記 八十歳)
3月27日~4月8日、仙台藤崎百貨店にて展覧会を開催予定