女性の役はなかなか回ってこないから

篠井さんの女方の大役は、ほかにも『リア王』のコーデリア、『サド侯爵夫人』のルネ、『ハムレット』のガートルードなど。

――『リア王』は鈴木忠志さんの演出で、リア王役がトム・ヒューイットでしたから、英語と日本語ごちゃまぜで。僕はコーデリア役で嬉しいんだけど、「女っぽくやらないでお能のように男でやれ」と言われて戸惑いました。

それから『サド』の演出はソフィー・ルカシェフスキーというフランス人の女性で、俳優は男6人でやらせていただきました。彼女はジャポニズムを入れたくて、ルネの登場シーンに花道を作らせたりしてましたね。

『ハムレット』のガートルードは、野村萬斎さんの主演の時。イギリス人の演出家だったけど、これも全部男優でした。

でもね、世の中には素敵な女優さんがいっぱいいらっしゃるから、なかなか僕に女性の役って回ってこないんですよ。なので、今度上演する『天守物語』のように、自主公演として、女主人公をバーンとやってみせるんです。

まぁ、歌舞伎の衣装や装置には敵わないから、いつの時代かどこの国かもわからないようにして、でも言葉は全部、尊敬する泉鏡花のままで。

僕がこうして自主公演を打つのは、「現代演劇で女方を生きる人間がここにいますよ」という、プレゼンテーションなんですよ。これだけはやっぱり、やり続けないと。

 

プレゼンテーションの結果として、今後やりたい役は?

――何でも好きな役をやらせてあげると言われたら、恥ずかしいんですけど、やっぱり『欲望~』のブランチなんですよ。

 

三つ子の魂百まで……しぶとく演じ抜いてくださいませね。

【関連記事】
【前編】現代演劇の女方・篠井英介「5歳で観た美空ひばりさんの時代劇映画をきっかけに踊りを習い始めて。その頃から、男より女の踊りのほうが好きだった」
初代中村萬壽、長男に時蔵の名を譲り、孫は梅枝を継いで一からスタート「歌舞伎役者として最初の転機は23歳のとき、松緑のおじさんとの出会いだった」
長塚京三「ちょっと毛色の変わった学部にと、衝動的に選んだ早稲田大演劇科。どこか遠くに行きたいとパリ留学へ。そこで映画出演の話が舞いこんで」