手を貸すことが、かえってマイナスになることも
私たち介護職は、ご高齢の方にもっとも自分らしくいてもらうために、一人の男性として、女性として、どんな方だったのかを知ることが大切です。
でも、自分の母親を前にすると、どうしても母親として見てしまい、一人の女性として見ることができなくなってしまうのです。
自分が見てきた母親は、本来のその人ではなかったかもしれませんよね。子どもから見た母親と、一人の女性としての母親は違うものだと、知識、経験、技術を持ってわかっているはずなのに、自分の親にはそれができないのです。
施設の利用者さんには、本当に穏やかに接することができても、家族となると取っちらかってしまう。
さらに始末が悪いことに、介護技術だけは持っています。ここは手助けをしないほうが本人のためになる。
そう頭ではわかっていても、目の前で親が動きづらそうにしているのを見れば、どうしてもかわいそうだと思ってしまうし、危ないことはさせたくないから、我慢できずに、つい手を貸してしまう。
結局、本人のできることを奪ってしまい、かえってマイナスになることもあります。そのうえ、介護の技術を持っていると、周囲から介護をやってくれるだろうと期待されてしまうことが、往々にしてあります。
親戚縁者に介護職や医療職の人が一人いると、「あの人は本職だから大丈夫」と安心して任せようとするんです。笑い話のようですが、医師でも看護師でもない医療事務のスタッフでさえ頼ってきます。
親戚縁者に身内の介護を丸投げされて介護職が介護離職をするというシャレにならない話は、いくらでもあります。