親の考え方を変えることはできません

そんな時代になったのですから、本来は、親も「子どもに面倒を見てもらうのは当然」という意識を変えなければいけないはずなのに、そこはアップデートされていないのが実情です。

そういう親に対して、「母さん、今は時代が違うんだから」などと正論で説得しようとしても、トラブルのもとになるだけです。むしろ、その考え方は「今さら変わらないよな」と諦めたほうがいいでしょう。

そのうえで、「子どもの受験で、今は難しいから」「大きな仕事を抱えていて、忙しい時期だから」などとコミュニケーションスキルを駆使して、やんわりと断るのが得策だと思います。

厄介なのは、介護する子ども側の意識もアップデートされていない場合です。

日本人はつくづく親の意見を尊重する国民だなぁと思うのですが、母親に「あなたが一緒に住んでくれたら、私もやっていけるような気がするの」と言われると、それを聞いた瞬間、「お母さんがそう言うなら、一緒にいてあげよう」という気持ちになってしまうのです。

でも、冷静に考えると、そんなことはありませんよね。母親は多分いろいろなことが不安になって、それをぶつけるところがなくて、いちばん言いやすい息子なり娘にぶつけているだけなんです。

でも、一緒にいたところで、できないことはどんどん増えていきますから、不安は少しも解消されません。

そのときに、「お母さんはそうやって気持ちを発散しているんだろうから、言わせてあげよう」と思えるかどうか。

親の考え方を変えることはできませんから、子どもがすぐに同調せず、冷静でいることが大事なのだろうと思います。

※本稿は『親の介護の「やってはいけない」』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

 

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親の介護の「やってはいけない」』(著:川内潤/青春出版社)

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