子が手を出しすぎることのデメリット
娘が実家に帰ってみると、昔はきれいに片づいていた部屋が散らかっていて、テーブルの上には、湯飲み茶碗や入れ歯洗浄剤が出しっぱなしになっている。
そうすると、娘さんは、「お母さん、なんてだらしないことしているの」と、プンプンしながらさっさと片づけてしまいます。
娘さんにしてみれば、「昔は、私に片づけろ、片づけろ、と口を酸っぱくして言ってたくせに、自分はこんな生活をしているなんて許せない」と思うから片づけてしまうんですが、でもこれ、決して出しっぱなしにしているわけではないんです。
膝の痛いお母さんが、一人でも暮らしやすいように創意工夫をして、わざわざテーブルの上に使いやすいように並べているんです。
それを娘さんが「私がなんとかしなきゃ」と、先回りして片づけてしまう。そうすると、入れ歯洗浄剤をお母さんの手が届かない棚の奥のほうにしまったりして、後日、お母さんは困ってしまうのです。
「片づけ上手だったお母さんも、年をとって膝が痛くなればこうなるんだね。しょうがないよね」と思えれば、娘さんもお母さんに対するイライラから解放されるし、お母さんも娘さんからキャンキャン言われなくてすむんですが、子どもというのはなかなかそうは思えないんですね。
親は、年をとっていろいろなことができなくなっていくなかで、それを受け入れ、知恵を絞って暮らしています。
そして、自分はどう最期を迎えたいのか、親が考えを研ぎ澄ましていこうとしているときに、子どもが先回りして「管理」してしまうと、それができなくなってしまいます。
施設に入るのか、自宅で最期を迎えるのかを決めるときもそうですよね。本来は、親本人が自分の意思で決めるべきことです。実際、北欧などでは、入る施設もすべて本人が決めます。
ところが、日本では子どもが親を管理して、最期を過ごす場所まで決めようとするから、ぐちゃぐちゃになってしまうんです。