親を介護する際の課題は、「仕事」や「お金」だけだと思っていませんか?実は、もっとも大きな課題は「家族関係」なのです。親を思って介護サービス利用を勧めた結果けんかになったり、自分で介護しようと抱え込んでしまったり……。それまでうまくいっていた家族仲が、介護で険悪になってしまうことも少なくありません。親も子どもも無理せず幸せになれる「家族介護」はどうすればいいのか?外資コンサル会社から介護の世界へ。そして3000件以上の介護相談に乗ってきた川内潤さんの著書『親の介護の「やってはいけない」』より、一部を抜粋して紹介します。
「介護」が「管理」になるとき
「『介護』と言いつつ、それ、親の『管理』になっていませんか」そう思うことが、介護の現場ではたくさんありました。
ご高齢の方がいらっしゃる家族とやりとりをしていると、本人の意向などそっちのけで、ご家族の方が「ここに手すりをつけてくれ」「あそこの段差をなくしてほしい」などと言ってきます。
ご本人が「まだ、そんなもの必要ない」と言っても、子どもたちが「これだけお父さんが生活しやすいようにいろいろ考えてあげているのに、なんで言うことを聞いてくれないの。つけてもらいましょうよ」となってしまう。
結局、本人は手すりなんていらないと思っているにもかかわらず、「子どもがそう言ってくれているのだから」と、渋々つけることを承諾してしまうのです。
でも、よく考えてみてください。「手すりをつけてほしい」と言ってこないのは、本人が困っていないからですよね。
それを先回りしてつけてしまうと、どうなると思いますか?それまで手すりがなくても、なんとか歩くことができていたのに、自然とそれに頼るようになって、身体の機能が低下します。
結局、手すりなしでは歩けなくなってしまうんです。これが、本当に親のためになっているのでしょうか。親が安全に生活できるようにと、子どもが勝手に先回りしていろいろやってしまう。
これは「介護」ではなく「管理」です。親のためと言いつつ、自分が安心したいがためのリスク管理でしかありません。