私は安価なカウンセラー?

何度目かに会った時、A子が娘の通うバレエ教室での「武勇伝」を話し始めた。

ある時、バレエ教室のロッカーで生徒の一人の財布がなくなるという事件が勃発したそうだ。普通ならすぐに先生に報告すると思う。

だが、A子はある生徒を犯人と決めつけ、その親に向かって「Cさん、盗んだことを素直に認めさせなさいよ。あなたも娘の品を良くしたいと思ってバレエ教室に通わせているんじゃないの?」と、大勢の前で言い放ったというのである。

「品を良くしたいんじゃないか」と誰かを責めたてる人の、どこに品があるというのだろう。こんな話を得意げに語る感覚についていけないと思った。

その頃から、彼女による電話攻勢が始まる。「盗難事件」の結末は教えてくれなかったが、おおかたA子の予想に反した真相が判明してバレエ教室で孤立し、話し相手がいなくなったのだろう。一度かかってくると、ゆうに2時間は話し続ける。

バレエ教室の話にとどまらず、隣人の悪口、実母への不満、夫の愚痴……。最初は私も彼女をかわいそうに思い、親身に話を聞いていた。しかしそれが彼女をつけ上がらせてしまったのか、電話は深夜にもかかってくるように。23時頃から話し始め、日をまたぐこともたびたびあった。

「そんな電話切ったらいいんじゃない?」と、別の知人にアドバイスされたが、大学時代、さんざん相談に乗ってもらった身としてはそう無下にできない。だが話の内容といえば同じことの繰り返しで、いささか辟易してしまう。