貧困家庭に生まれ、いじめや不登校を経験しながらも奨学金で高校、大学に進学、上京して書くという仕事についたヒオカさん。「無いものにされる痛みに想像力を」をモットーにライターとして活動をしている。第86回は「カムカムが描いた夢が叶わないこと」です。
ジョーの描かれ方が斬新
現在再放送中の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK)は、安子(上白石萌音)、るい(深津絵里)、ひなた(川栄李奈)と親子3代のヒロインの物語が描かれる画期的な内容で、名作と言われることも多い。
身分違いの恋が実るも、戦争により死別してしまう安子編はとくに人気や評価が高い。個人的には、安子の娘・るいの物語が印象的だ。
『カムカムエヴリバディ』は3人のヒロインが登場すること以外にも斬新な点がある。るいの夫、ジョーこと大月錠一郎(オダギリジョー)の描かれ方だ。
るいはひとりで回転焼き屋を切り盛りしながら子ども2人を育てるのだが、夫であり父親でもあるジョーは、無職なのだ。
仕事がないことに違和感を抱くのは、ジョーが男性だからか? と自分の中のジェンダーバイアスを疑ってみたが、家庭に入った女性が無職の場合、家事や子育てを一手に引き受けるか、多めに負担するものだ。
しかし、ジョーは家のことすらできないのだ。子どもの遊び相手にはなるけれど、これといって何かするわけでもなく、加えて筋金入りの不器用で、簡単な計算もできないので店番もできないし、回転焼きの仕込みをさせるとかえってるいの手間が増えてしまう。