花咲く日は来ない
るいはいつか治療法が見つかった時のために貯金までしていた。ジョーの才能にほれ込み、心から応援する人はたくさんいて、誰もがいつかまたジョーがプロの演奏者として舞台に立つ日を心待ちにしていた。
普通のドラマだったら、こういう場合、何か新しい治療法などが見つかって、一発逆転、夢が叶う。困難は夢が叶うための伏線で、苦労が多いほど、報われた時の幸せも大きくなる。
でも、『カムカムエヴリバディ』ではそうはならない。ジョーがプロのトランペッターとして花咲く日は来ないのだ。
しかし、このストーリーこそ、とてもリアルだと思った。
メディアは、最後は努力は報われる、いつか夢は叶うというストーリーを持て囃し過ぎている。そういう全体では極めてレアなケースだけ持ち出して一般化するのはどうなのか、といつも思う。
もちろん、苦労が望んだ形で報われる人だっている。でも、そうではない方が、現実には多いのではないだろうか。
努力は報われないし、夢は大抵叶わない。そっちの方がよほどリアルなのだ。人生を生きていれば、そういった現実とも折り合いを付けていかないといけない。