何が本当に幸せかはわからない
ジョーは、トランペッターとして花咲くことはできなかった。でも不幸な人生だったか? というと、決してそんなことはない。仲間に恵まれ、子どもに恵まれ、何より、どんな姿でも受け入れてくれるるいと出会った。
るいはトランペットが吹けなくても、決して見捨てたりなどしなかった。それどころか、仕事の手伝いも、家事もろくにできないジョーでさえ受け入れたのだ。
そういう点では、ジョーの人生は幸せだったのではないだろうか。
何か大きな成功をおさめることや、たくさんの人に認められることが幸せだと思われがちだが、実際はそうとも限らない。結局は自分がどう感じるか、それがすべてだとも思うのだ。
一見夢を叶え、成功をおさめたかのように思えても、その立場だからこそ受けるプレッシャーや責任で潰れてしまう人もいるし、名声に人が寄ってきて人間不信になることだってある。何が本当に幸せかはわからないものだ。
最近、アイドルのオーディション番組が増えている。合格した人が注目されるが、その背後には、その何倍もの通過しなかった人たちの人生がある。プロのスポーツの世界も、活躍できずに引退していく人たちの方が多い。夢が叶わないほうが多数派で、それを失敗だと断じることはできない。そして、夢が叶わなかったあとの人生の方が長いのだ。
夢が叶わなかった先の生き方を考える方が大事なのではないかと思う。