「快楽順応仮説」と「相対所得仮説」

経済的な豊かさを表わす1人当たりGDPと幸福度には明確な相関関係が見られない―これには、2つの仮説が考えられています。「快楽順応仮説」と「相対所得仮説」です。

「快楽順応仮説」とは、例えば宝くじが当たった時、最初は幸福ですが、徐々に慣れてしまいます。他にも、結婚した直後は幸福度が上がりますが、その後は下がっていきます。

喜ばしいイベントや、富や名声を得て束の間の喜びを味わった後は、遺伝の設定値に戻るということです。

「相対所得仮説」とは、幸福度は周囲の人との比較で決まるため、自分よりも稼いでいる人やいい暮らしをしている人が周囲にいると、「あの人と比較すると自分は幸せではない」と思ってしまうものです。

近年では、SNS等で、自分よりもいい暮らしをしている人が可視化されやすくなっているため、「他者と比較する機会」が増えているといえます。

そして、幸福度の40%を決める「意図的な行動」というのは、人に親切にする、家族や友人との人間関係を育てる、身体を動かす、感謝の気持ちを表す、など、「自分の価値観に沿った内的で習慣的な行動」のことです。

住む場所や仕事、パートナーなど、自分の外側の環境を整えることも幸せにつながりますが、それ以上に、自分自身を豊かに整える習慣的で主体的な行動が、長期的で持続的な幸せに影響しているということです。

 

他人と比較しない(写真提供:Photo AC)