レシピは敵? 味方?

佐々木 レシピがあると、背伸びができて身の丈に合わないこともできる。だから依存してしまう可能性はありますね。背伸びしてできた料理が喜ばれて、料理のやる気が生まれて、続けられることもあるとは思います。

山口 レシピを見ても失敗する人も、もちろんいるんですけどね。でもやっぱりレシピがあると、身体で体感しながら作る感覚が抜け落ちちゃうんだと思うんです。

佐々木 食材にすでに火が通っていて、そのサインもあるのに、レシピで指示された調理時間まではまだまだ、みたいなことはよく起こっているでしょうね。

山口 レシピを見てある程度美味しい料理を作れてしまうと、自分の勘に頼ることが怖くなる。勘に頼ってまずくなってお金も時間も無駄にするよりは、明らかで、安定した方法を取りたくなる。でもそれだとなかなか実力が積み上がらないこともあると思います。

佐々木 日々のご飯を作ることではなく、料理のプロを目指すことが目的なら、過去の偉大なレシピをたくさん再現することも、必須かもしれません。

山口 レシピ自体が悪者とは言えなくて、単に過多なんだと思います。レシピには答えが書かれてあるし、本やSNSで広がりやすいから、世の中のニーズを満たしやすい。だから料理家にとってはレシピを作ることがお金になって経済を回していくことでもあり、プロアマ問わずに作られたレシピがインターネットをはじめ、テレビ、雑誌、書籍などいろんなメディアで見られるようになっている。そうして料理をやったことのない人が料理を始めようと思うと、それしか目に入ってこない状況になっている、ということだと思います。

 

※本稿は、『自炊の壁 料理の「めんどい」を乗り越える100の方法』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。


自炊の壁 料理の「めんどい」を乗り越える100の方法』(著:佐々木典士、山口祐加/ダイヤモンド社)

初心者だろうと、日々料理を作る人だろうと、平等に立ちはだかる【自炊の壁】──。

「どうすれば、自炊を楽しく続けられるのか?」を図解やイラストを交えながら、100のテーマで解き明かします。

コンビニ弁当をかごに入れる前に、レシピで眉間にしわを寄せる前に読んでほしい一生モノの“自炊”啓発書。