幼少期の経験差はとてつもなく大きい

ひとつ、例えばだ。

浦沢直樹の『20世紀少年』という、昭和臭の強い作品がある。大阪万博が強くフィーチャーされていたこのストーリーを、昭和40年生まれの人間には書けない。浦沢先生は昭和35年の早生まれで、万博開催時は小学5年生。強く惹かれた年頃だ。同級生たちと大いに盛り上がっただろう。

『ウルトラマン』も小学低学年で遭遇しているから、受けた影響を強く感じさせる。再放送で目撃した我々世代とは、ありがたみが異なるように伝わってくる。

『俺たちの昭和後期』(著:北村明広/ワニブックス)

さらに加えて、ロックバンドT REXの名曲「20センチュリー・ボーイ」も物語に強く関与する。ちょうど洋楽に興味を持つ時代の浦沢少年だったかもしれない。ヒットしたのは彼が中学2年生だ。洋楽にショックを受けるタイミングにはベストで、万博・ウルトラマン同様に、感情が作品の中で生き生きとしている。

とまあ、アラ還にとっての5歳差はさほどではないが、幼少期の経験差はとてつもなく大きい。

そもそも人には人の数だけ差異がある。受け入れてみることで、おもしろい自分が練り上げられる。これを昭和後期世代は、当たり前にして生きてきた。SNSで類友とばかり繋がっている、若い世代の読者さんには強く言いたい。他人への尊重と寛容がなければ、調和は生まれない。

と、偏った主張を正当化しようと姑息な訴えかな。