大人たちは子供たちのために全力であり、本気だった
このスピリットを持てた深い感謝から、雑誌『昭和40年男』の創刊号に、藤岡弘、のインタビューなしではありえないと、つんのめった。
見事、取材依頼は受け入れられ、記念すべき創刊号の表紙にも登場している。
彼は言った。ショッカーの戦闘員こそがヒーローなんだと。
撮影では、大きな石がゴロゴロしている地面に、ライダーの攻撃を受けるたびに飛び込む。あざだらけの身体で、撮影が終われば稽古に励む。弁当は粗末なシャケ弁当だったと、心よりの声を振り絞った。
大人たちは子供たちのために全力であり、本気だった。壮絶な現場を作り上げ、ブラウン管からはみ出してくるような熱が、ガキどもの心を鷲掴みにしたのだ。
藤岡本人も、撮影中の事故で大怪我を負っている。攻めた走りのバイク転倒で、足があらぬ方向に曲がっていた。慌てて戻した瞬間に、意識を失ったと語っていたのには、思わず顔をしかめてしまった。
この入院による代役で登場したのがライダー2号とは、ガキには到底想像できず、取り入れられた変身ポーズに夢中になった。番組中断も検討されたようだが、不屈の魂は『仮面ライダー』そのままにシリーズは続き、今へと繋がる。本気で演じた藤岡の大怪我によってもたらされた、運命めいたストーリーだ。
やがて1号はカッコよくなって戻ってきた。ダブルライダーの大興奮も経験した。
※本稿は、『俺たちの昭和後期』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
『俺たちの昭和後期』(著:北村明広/ワニブックス)
大阪万博後の昭和46年からミラクルジャパンを成し遂げた昭和64年まで――
人気雑誌『昭和40年男』創刊編集長が“俺たちの”熱源を大検証!
懐かしむのではなく、明日への元気と夢を灯す――。共感渦巻くエンタメ新書です。