現代まで引き継がれている「切り放ち」

胸が悪くなるような話ばかりしましたので、最後に少し明るくなる(?)話をご紹介しましょう。

江戸市中で10万人超の犠牲者を出したといわれる明暦の大火(明暦3年・1657年〉に際し、石出帯刀(諱は吉深)は収監者を火から救うため、独断で「切り放ち」(期間限定の囚人の解放)を行いました。

彼は収監者に対し「火から逃げられたら、必ずここに戻ってくるように。そうすれば死罪の者も含め、私の命に替えて必ずその行動に報いよう。だが、もしこの機に乗じて逃げるなら、地の果てまで追い、その者のみならず一族郎党全てを成敗する」と伝え、猛火が迫る中で数百人余りの「切り放ち」を実施しました。

収監者たちは涙を流して帯刀に感謝し、約束通り全員が牢に戻ってきたといいます。

帯刀は「罪人といえど約束を守ったのは天晴れである。このような振る舞いはほめられるべきである」と評価し、老中に死罪も含めた罪一等の減刑を嘆願。幕府も収監者全員の減刑を実行する事となったそうです。

この処置はこれ以後江戸期を通じて「切り放ち後に戻ってきた者には罪一等減刑、戻らぬ者は死罪(後に「減刑無し」に緩和された)」とする制度として慣例化されました。また明治になると明文化され、現代まで引き継がれているそうです。

実際に関東大震災や太平洋戦争の空襲の時に、受刑者を「切り放ち」した記録が残っています。

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