25年春のNHK連続テレビ小説『あんぱん』のモデルであり、子どもたちに愛され続けているキャラクター「アンパンマン」の生みの親である、やなせたかしさん(1919~2013年)。新聞記者、宣伝部デザイナー、編集者、放送作家、舞台美術、作詞家など多分野で活躍し、1973年に代表作である『あんぱんまん』の絵本を出版。苦しい時もユーモアと好奇心を忘れなかった著者が、前向きに生きる秘訣を語る著書『何のために生まれてきたの?』(PHP文庫)より一部を抜粋して紹介します。
東日本大震災の後、一番多く歌われた『アンパンマンのマーチ』
東日本大震災の後に、「『アンパンマンのマーチ』を聴きたい」というリクエストが放送局に寄せられ、その後、曲が流されると、さらに多くのリスナーから要望があって、繰り返し放送されたと聞きました。
――それを聞いて、すごくうれしかった。普段はあまり、アンパンマンのテーマソングとかを歌われたり、ほめられたりしないんでね。ところが東日本の震災の後、一番多く歌われたのが『アンパンマンのマーチ』だったと聞いて、本当にうれしかった。歌っていうのも、ある程度何かの役に立たなくちゃいけないと思うので、今度はお役に立てたかなと思って。
それで被災地を何かの意味で元気づけなくちゃいけないと思い、アンパンマンのポスターを描いて送ったら、避難所や病院に貼るということで、あっというまになくなってしまったと。あと、歌をつくったり、現地でコンサートなんかもやって、子どもたちに喜ばれたみたいです。
震災後に仙台の女の子から「私はこわくない。アンパンマンが助けに来てくれるから」という手紙をもらいまして、アンパンマンが助けに行くことはできないけれど、そう信じているなら、作者としてそれに値することをしなくちゃいけないと思ってね。